吸入器の種類は?特徴や注意点&よく使われる吸入薬

気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の症状緩和のために使用される吸入器は、どのような種類があるのでしょうか。
「吸入器」と言っても、大きく分けてタイプが3つあります。
せっかく吸入器を準備したとしても、正しく使用しなければ期待通りの効果は得られません。
ご自身のための吸入器というよりも、高齢のご両親や小さなお子さんというように、家族のために吸入器を探しているという方もいるでしょう。
吸入器はメンテナンスが必要なものもありますので、使用するご本人の問題だけではありません。
フォローするご家族にとっても使いやすい吸入器が選べるよう、特徴や注意点を理解しておきましょう。
吸入器の種類
喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療では、気管支に薬を直接届けるために吸入器を使用します。
吸入器には種類がありますので、基本的な吸入器の種類についてご説明します。
- pMDI(加圧噴霧式定量吸入器)
- DPI(ドライパウダー定量吸入器)
- SMI(ソフトミスト定量吸入器)
pMDI(加圧噴霧式定量吸入器)
pMDIとは、pressurized(加圧された) Metered(メーター制) Dose(用量) Inhaler(吸入器)の頭文字をとった言葉です。
エアゾール缶を押すと1回分の薬液がエアゾールとなって噴射されます。
薬剤の噴射のタイミングと吸入のタイミングを合わせる必要がありますので、自身で呼吸をコントロールできる人が使用できる吸入器です。
pMDI(加圧噴霧式定量吸入器)につけるスペーサー
pMDIの補助器具として、スペーサーと呼ばれる器具があります。
噴射のタイミングと吸入のタイミングを合わせるのが難しい高齢者や小児の吸入に使用します。
吸入しやすくなるだけでなく、薬剤が口に残りにくいというメリットがあります。
マスクタイプとマウスピースタイプがあるので、吸入が難しい方にはマスクタイプを使用すると口元にフィットするので失敗が少ないでしょう。
スペーサーは自身で購入しなければいけませんので、お薬を処方してくれる医師に相談してください。
pMDI(加圧噴霧式定量吸入器)使用時の補助器具
pMDIは薬剤を噴射するためにボタンを指で押さなければなりませんが、指の力が弱い方だとボタンが押しにくいという悩みがあります。
弱い力でもボタンが押しやすいような補助器具が、各メーカーで配布されています。
自分のペースでボタンが押せるよう、薬局で相談してみるといいでしょう。
DPI(ドライパウダー定量吸入器)
DPIとは、Dry Powder Inhalerの頭文字をとった言葉です。
粉末状態の薬剤を自分で吸入するもので、pMDIのように吸入のタイミングを合わせる必要はありません。
呼吸する力が必要なので、高齢者や小さなお子さんには難しいかもしれません。
主に小学生以上に推奨されています。
口腔内に薬剤が残りやすいので、好みでないという方もいます。
SMI(ソフトミスト定量吸入器)
SMIとは、Soft Mist Inhalerの頭文字をとった言葉です。
噴射ガスを使わずに、薬剤がミスト状にゆっくりと噴射される吸入器です。
時間は数分間かかりますが、自分の自然な呼吸の中で吸入ができます。
高齢者や幼児でも失敗なく、確実に使用できます。
ネブライザーの3種類
薬剤をミスト状に噴射するSMI吸入器をネブライザーといいます。
入院病棟や救急外来で使われるイメージが強い方がいるかもしれませんが、自宅でも使用できるものです。
家庭で使用できるネブライザーは大きく3種類に分けられますので、ご紹介します。
- ジェット式ネブライザー
- メッシュ式ネブライザー
- 超音波式ネブライザー
ジェット式ネブライザー
ジェット式ネブライザーは、コンプレッサー式とも呼ばれる種類です。
コンプレッサーとは、空気圧縮機を指すもので身近な家電ではエアコンなどに使用されています。
ほとんどの薬剤を吸入できるのがメリットですが、作動音が大きくなるので気になる方もいるかもしれません。
「夜間に使用する可能性がある」「子供を寝かせながら使用したい」という場合は、他のタイプとも比較してみましょう。
メッシュ式ネブライザー
メッシュ式ネブライザーとは、振動によって霧状にした吸入薬をメッシュの穴から押し出す吸入器です。
傾けた状態でも吸入できるのが最大のメリットで動作音も静かなので、深夜によく吸入器を使う方におすすめです。
コンセントでなく乾電池で作動するタイプを選べば、旅行先といった出先でも使用できます。
使用できる吸入薬が限られるので、医師に相談してから購入するといいでしょう。
超音波式ネブライザー
超音波式ネブライザーとは、超音波振動によって吸入薬を霧状にして噴射する吸入器です。
持ち運びは想定されておらず大型で、長期間使用できるパワーの強さが特徴です。
メッシュ式ネブライザーと同様に、使用できる吸入薬が限られるので医師との相談が必要です。
吸入器の特徴
吸入器の種類として分けられる、pMDI(加圧噴霧式定量吸入器)、DPI(ドライパウダー定量吸入器)、SMI(ソフトミスト定量吸入器)の特徴を比較してみましょう。
- pMDI(加圧噴霧式定量吸入器)の特徴
- DPI(ドライパウダー定量吸入器)の特徴
- SMI(ソフトミスト定量吸入器)の特徴
pMDI(加圧噴霧式定量吸入器)の特徴
pMDIのボタンを押すタイミングと吸入する呼吸のタイミングを合わせる必要があると先述しました。
タイミングさえ合わせれば、呼吸機能が低下している時でも吸入しやすいという特徴があります。
小型で軽量なので、持ち運びしやすいというメリットがあります。
一方で、エタノールなどの添加物により、むせてしまう場合がありますので注意が必要です。
使い方が難しいと感じる場合は、ご紹介したスペーサーなどの吸入補助器具を使用してみてください。
DPI(ドライパウダー定量吸入器)の特徴
粉末状の吸入薬を自分で吸う吸入器で、機械操作がないので扱いは簡単です。
息を吸い込むのは力だけでなく、スピード感も必要です。
DPIは吸気流速で薬剤がエアゾール化されるものです。
深呼吸のようにしっかり吸うだけでなく、吐くという動作も一連の流れとして行わなければいけません。
最初に処方される時には、練習機で喉を広げる練習をする場合があります。
SMI(ソフトミスト定量吸入器)の特徴
pMDIやDPIと比較した時のSMIの特徴としては、時間がかかるものの自分の呼吸の中で無理なく吸引ができるという点です。
時間は5分程度必要で、小さな子供だと最初は嫌がって上手に吸引できない場合があるかもしれません。
SMIが最も簡単に使用できる吸入器となりますので、徐々に慣らしていきましょう。
自宅でSMIを使うとなると保管場所が必要になり、携帯に不向きなタイプが多いというのがデメリットです。
使用する際にはコンセントが必要で、携帯タイプであれば乾電池が必要です。
代表的な吸入薬の種類
喘息のお薬は症状がなくても日常的に使用する長期管理薬(コントローラー)と、発作時にのみ使用する発作治療薬(リリーバー)があります。
代表的な吸入薬のお薬は、以下の5つになります。
長期/短期 | 具体例 | |
---|---|---|
吸入ステロイド薬 | 長期管理薬 | キュバール
フルタイド パルミコート オルベスコ |
長時間作用型β2刺激薬 | 長期管理薬 | セレベント
オンブレス ホクナリンテープ |
吸入ステロイド薬と 長時間作用型β2刺激薬の配合剤 |
長期管理薬 | アドエア
シムビコート |
抗コリン薬 | 長期管理薬 | スピリーバ |
短期間作用型β2刺激薬 | 発作治療薬 | メプチン |
- 吸入ステロイド薬
- 長時間作用型β2刺激薬
- 吸入ステロイド薬と長時間作用型β2刺激薬の配合剤
- 抗コリン薬
- 短期間作用型β2刺激薬
吸入ステロイド薬
吸入ステロイド薬は、喘息の悪化を防ぐために長期的に使用するものです。
発作がなくても毎日規則的に服用するもので、即効性はありません。
ゆっくりと効果が表れるものなので、3日~1週間程度すると効果を感じられるようになるでしょう。
口腔内にお薬が付着すると、しわがれ声や口内炎などの副作用が起こりやすくなります。
副作用といっても、吸入ステロイド薬は使用した部分にのみ作用するため副作用が少ないお薬として知られています。
使用後にはうがいをするというような基本的な使用方法を守りましょう。
長時間作用型β2刺激薬
長時間作用型β2刺激薬は、気管支を拡張させて呼吸を楽にしてくれるものです。
気管支平滑筋のβ2受容体を刺激するもので、喘息や気管支炎などの治療に用いられます。
発作時に使用しても即効性があるものではなく、毎日使い続ける必要があります。
吸入ステロイド薬と長時間作用型β2刺激薬の配合剤
2種類の吸入薬が混ざった吸入薬で、気道の炎症を和らげ、気管支を広げる作用が期待できます。
同時に2つの薬の作用が働くため、相乗効果が得られます。
1日2回以上吸引する場合は12時間以上の間隔をあけるなど、注意点を確認して使用しましょう。
抗コリン薬
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療でよく使用されるのが、抗コリン薬です。
抗コリン薬とは、副交感神経の伝達物質であるアセチルコリンの働きを抑制する薬の総称です。
一般的にアセチルコリンは集中力や記憶を助ける、消化器の調節を助けるといった働きがあります。
胃や腸の消化管の運動に関与していますので、狭くなった気管支を広げる目的で抗コリン薬が使用されます。
短期間作用型β2刺激薬
短期間作用型β2刺激薬とは、すばやく気管支を広げて喘息や咳などの症状を和らげる吸入薬です。
毎日使用するものではなく、発作を抑えるための発作治療薬です。
喉がヒューヒューなる、咳が出るといった、喘息がひどくなる前に使用すると効果的です。
発作時の乱用は危険なので、自宅で使用する場合は医師の指示を守りましょう。
子供が吸入器を使用する時
小児の喘息は年々増加傾向にあり、学童期における有病率はこの30年間で約4倍になったといわれています。
参照:総合病院国保旭中央病院|気管支喘息について小児科の立場から
喘息の症状を緩和させてあげるために吸入器を準備するという家庭も少なくないでしょう。
お子さんが使用する吸入器は、年齢や本人の使いやすさに合わせたものを選んであげるべきです。
恐怖心なく使えるタイプで「吸入は辛いものじゃない」というイメージを持たせてあげられるようにしなければいけません。
「呼吸のコントロールができない」「うがいが難しい」という年齢のお子さんはネブライザーを選ぶといいでしょう。
「吸って吐くの区別ができる」「深呼吸ができる」という状態になれば、pMDIが使えるようになります。
最初は練習しながら、発作時に焦らず吸入器が使えるようにしていきましょう。
吸入器に関するよくある質問
吸入器に関するよくある質問をまとめました。
- 吸入器を使う理由は何ですか?
- 吸入器が必要な病気は何ですか?
- 吸入器の購入は保険適用になりますか?
- 吸入薬はドラッグストアで購入できますか?
吸入器を使う理由は何ですか?
吸入器を使うと、吸入薬を気道病変部に直接届けられるためです。
飲み薬や貼り薬を使用するよりも、少量の薬で効果が得られると期待できます。
吸入器が必要な病気は何ですか?
吸入器が必要な病気は、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などです。
薬剤がピンポイントで効くので副作用が少なく、すぐに効果を感じられるというメリットがあります。
吸入器の購入は保険適用になりますか?
吸入器の購入は保険適用になりません。
スペーサーなどの吸入補助器具は、「初回に限り」というように条件を満たせば保険適用になる場合があります。
吸入薬はドラッグストアで購入できますか?
吸入器で使用する吸入薬は、ドラッグストアなどで購入できるものではありません。
医療機関を受診し、症状に合わせて処方してもらう必要があります。
吸入器の種類は医師と相談を
吸入器が必要だと感じても、自分だけの判断で吸入できるわけではありません。
吸入薬は医療機関で処方してもらう必要がありますし、吸入薬に合わせた吸入器が必要になるためです。
しかしだからといって医師に任せっきりにするのではなく、吸入器の特徴を知った上でどの吸入器が自分に合っているのかを考えてみましょう。
症状や吸入薬の種類、年齢や使用シーンなどによって、適切な吸入器は人それぞれです。
家庭の状況なども考慮し、医師と相談しながら吸入器を選んでいきましょう。